営業フレームワーク「BANT」とは?ヒアリングのコツと活用のポイント
2025/1/6

営業活動において、いかに効率よく見込み顧客を評価し、リソースを最大限に活用できるかは、成果を左右する重要な要素です。そのために活用されるフレームワークの一つが「BANT」です。
この記事では、BANTの基本的な構造を詳しく解説します。また、実際の営業現場でどのようにこれらを活用すればよいのか、ヒアリングの具体的なコツや活用ポイントをご紹介します。この記事を通じて、BANTを営業の現場で活用するための知識とアイデアを深めていただければ幸いです。
「BANT」とは?
BANTは営業活動の中で用いられるフレームワークで、1960年代にIBMがはじめて提唱したといわれています。以下ではBANTの基本的な定義とその発展形である「BANTCH」について簡単に解説します。
BANTの定義
BANTは、次の4つの要素で構成されています。このフレームワークを用いることで、見込み顧客の質を評価し、商談成立の可能性を的確に見極めることが可能になります。
- Budget(予算)
顧客が解決策の導入に割ける予算がどの程度かを確認します。この要素を把握することで、商談のスムーズな進行が可能になります。 - Authority(決裁者)
商談における最終的な意思決定者を特定します。権限を持つ人物を明確にすることで、的確な提案や商談が実現します。 - Need(ニーズ)
顧客が解決すべき課題や、製品・サービスへの具体的な必要性を確認します。これにより、提案内容を顧客に最適化できます。 - Timing(タイミング)
顧客が導入を検討しているタイミングを把握します。この要素を理解することで、適切なアプローチのタイミングを逃さず、成約率を向上させることができます。
「BANTCH」との違い
「BANTCH」は、BANTをさらに拡張したフレームワークで、以下の2つの要素が追加されています。
- Competitor(競合)
顧客が他社の製品やサービスと比較している場合、その競合情報を把握します。これにより、自社製品の優位性を的確に訴求する戦略を立てられます。 - Human resources(人的資源)
顧客が導入後の運用に必要な人的リソースを持っているかを確認します。これを事前に把握することで、導入プロセスの成功確率を高めることができます。
BANTCHは、顧客理解を深めるための包括的なフレームワークであり、競争の激しい市場や複雑な商談において特に効果的です。
BANTにおける4つの要素とヒアリングの例
以下ではBANTの4要素について詳しく解説をしていきます。
Budget(予算)
顧客の予算を確認することは、商談が成立するかどうかを判断する最初のステップです。予算が不十分である場合、他のソリューションを提案する必要があるかもしれません。
【具体的な質問例】
- 「この課題の解決に割ける予算感を教えていただけますか?」
- 「現在の予算で不足する場合、追加の調整が可能でしょうか?」
予算の確認は、営業の早い段階で行うことが推奨されます。これにより、時間やリソースを無駄にすることを防ぎます。
Authority(決裁者)
商談がスムーズに進むかどうかは、意思決定者とのコミュニケーションにかかっています。決裁者が誰であるかを特定し、その人物に適切な情報を提供することが不可欠です。
【具体的な質問例】
- 「このプロジェクトにおける最終的な決裁権をお持ちの方はどなたですか?」
- 「どのような承認プロセスを経る必要がありますか?」
Need(ニーズ)
顧客が抱える課題や製品・サービスの必要性を具体的に把握することで、より価値のある提案が可能になります。また、顧客の潜在的なニーズを引き出すことで、新たな商談の可能性が広がることもあります。
【具体的な質問例】
- 「現在最も優先度の高い課題は何ですか?」
- 「理想的な解決策はどのようなものでしょうか?」
Timing(タイミング)
顧客が導入を検討している具体的な時期を把握することで、アプローチのタイミングを逃さず、効率的な営業活動が実現します。
【具体的な質問例】
- 「いつまでにこの問題を解決する必要がありますか?」
- 「プロジェクトのスケジュールについて、どの程度具体的に決まっていますか?」
BANT条件をヒアリングする際のコツ
BANTフレームワークを活用するためには、適切なヒアリングが欠かせません。ただし、BANTに基づいて必要な情報を集める際、顧客に不信感を与えたり、会話が一方的になったりすることは避ける必要があります。以下に、より効果的なヒアリングを行うための具体的なコツを詳しく解説します。
トークスクリプトに組み込む
営業トークスクリプトにBANTの要素を自然に取り入れることで、必要な情報をスムーズに引き出すことができます。たとえば、予算に関する質問を提案フェーズの会話に組み込むことで、顧客に違和感を与えずに予算感を確認できます。また、決裁者に関する質問も、提案の実現性を確認する文脈で盛り込むと、スムーズに情報を得られるでしょう。このように、あらかじめ練り込んだスクリプトは、顧客との対話を円滑に進めるための強力なツールとなります。
ただし、スクリプトは固定的なものではなく、状況に応じて柔軟に調整する必要があります。顧客ごとに異なる課題や状況に寄り添い、自然な会話の中で情報を収集することが求められます。そのためには、質問内容を会話調にアレンジし、「聞き出している感」を軽減する工夫も大切です。
予算は早めにヒアリングする
予算の確認は、商談の初期段階で行うことが最も効果的です。なぜなら、予算を早期に把握することで、商談の実現可能性を迅速に判断できるからです。予算が十分でない場合には、他の提案や解決策を模索する時間を確保できます。また、顧客が明確な予算感を持たない場合には、業界平均や過去の事例を提示することで、顧客に予算設定の参考情報を提供することができます。
予算について話題にする際には、顧客が「売り込みを受けている」と感じないよう配慮が必要です。そのため、「最適な提案のために」という文脈で予算を尋ねると、顧客に安心感を与えやすくなります。例えば、「この課題に取り組む際、どの程度のコスト感を想定されていますか?」といった質問は、会話の流れに沿いやすく、顧客の負担感を軽減します。
タイミングはこちらからも提案してみる
顧客が導入時期を明確にしていない場合、営業側からスケジュール案を提示することは、商談を進めるために非常に有効です。具体的なタイミングを提案することで、顧客に検討の枠組みを提供し、意思決定を促進する役割を果たします。たとえば、「このプロジェクトを〇月までに導入すると、繁忙期を避けて効果的に運用できます」という提案は、顧客に具体的なイメージを持たせる助けとなります。
顧客の事業スケジュールや業界特性を考慮した提案を行うことが重要です。特に、年度末や繁忙期前など、顧客が特定のスケジュール上で動きやすいタイミングを理解することが鍵となります。このアプローチによって、営業側が商談の主導権を握りつつ、顧客との信頼関係も構築できます。
BANTを意識しすぎず自然な流れで聞く
BANTフレームワークに固執しすぎると、顧客に堅苦しい印象を与えるリスクがあります。顧客との信頼関係を構築するためには、会話の中で自然に必要な情報を引き出すことが重要です。そのため、まず顧客の話に耳を傾け、関心を示しながら質問を展開する姿勢が求められます。
たとえば、「どのような背景でこの課題に取り組まれていますか?」といったオープンな質問を活用することで、顧客が自由に話せる環境を作ることができます。また、情報収集の意図を事前に共有することも効果的です。「より具体的で適切な提案を差し上げるため」といった理由を説明すれば、顧客は質問に対して前向きに答えやすくなるでしょう。
営業として重要なのは、BANTの全要素を網羅的に聞き出すことではなく、顧客にとって自然で心地よい会話の中で、必要な情報をさりげなく収集することです。これにより、顧客との関係性を深めつつ、商談を次のステップへとつなげやすくなります。
BANTは営業効率を高めるためのフレームワーク
BANTを活用することで、営業プロセスの効率化や成約率の向上が期待できます。これらを営業活動に取り入れ、顧客の状況やニーズに合わせた提案を行うことで、さらに成果を高めていきましょう。
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